ニュース / 新着情報 詳細

【レポート】コンペ部門の上映に、ヨーロッパ、アジア、日本からゲストが登場!6/14 ラフォーレ原宿会場

2018/06/15

本日も、世界中から力作が揃ったオフィシャルコンペティション部門DAY!ここでは、上映後に行われた熱気あふれるQ&Aセッションの模様をお届けします。

 

インターナショナル プログラム 6

スティーブン・ドーフが出演した『ライフボート』の特別上映も行われた同プログラム。Q&Aセッションにはスペインから、『お静かに』のCarlos Villafaina監督が登場してくれました。

「個人的な話に力を貸してくれたスタッフ・キャストに感謝しています。この作品が、世界中の人々に観てもらえるのが信じられません」とCarlos Villafaina監督

介助者のドタキャンによって、脳性小児まひの兄・ハビエルの仕事場に付き添うことになった主人公のダニ。その過程で直面するさまざまな事態に、障がい者とその家族が社会に適応することの難しさが映し出されます。

実はこの作品、Carlos Villafaina監督にとって非常にパーソナルな内容。脳性小児まひのバビエルを演じるのは監督の双子の実兄であり、ロケーションも父の工場、祖母の家、バビエルが働く図書館だったといいます。大学の卒業制作ということもあり、予算はわずか300ユーロ。準備に2ヵ月、撮影は3日で行ったそうです。

『お静かに』の一場面。後方に映る車椅子の青年が、Carlos Villafaina監督の双子の実兄。

Carlos Villafaina監督が描きたかったのは、“助けたい気持ち”と“自分の生活”の狭間で揺れる、障がい者を抱える家族の現実。シリアスなテーマの中にもユーモアを忘れないラストシーンが胸に残りました。

 

アジア インターナショナル&ジャパン プログラム 8

バングラディシュ、タイ、シンガポール、そして日本と、国際色豊かなフィルムメーカーが登場してくれた本プログラム。

最初の作品は、バングラディシュで暮らす4人家族が、国民的スポーツ“クリケットのTV観戦を通じて、幸せのカタチを発見していく『それもまた人生』。Abrar Athar監督は、今までなかなか世界に誇れるものがなかったバングラディシュが、近年クリケットの強豪国となったことで、国中が熱狂し社会現象となっていることから本作の着想を得たといいます。

『それもまた人生』のAbrar Athar監督

 

適齢期になると、多くの人が受けることになる“面倒くさい質問”が、そのまま作品名になった『親戚に「まだ恋人いないの?」と聞かれたことはありますか?』。なんとこれ、SSFF & ASIAでは珍しいミュージカル作品!タイトル以上にユーモラスな内容に仕上がっています。

タイから来日したSuebboon Kaewpaluek監督は、大学でミュージカルの舞台をプロデュースしている音楽通。この作品も主役を演じた女の子と共作した楽曲を膨らませることで1本のショートフィルムへと結実していったといいます。

 

少年期の忘れられない体験が、思い出のプールを訪れることで生々しく蘇っていく『カトンプールでの最後の日』。この作品は、シンガポールのケーブルTVの企画でつくられたそうですが、物語の核となる官能的なシーンが放送コードに引っかかり、カットされてしまったとのこと。もちろん、このプログラムでは完全版を上映!監督自身の思い出も生かされているという、数々の美しいシーンを堪能できました。

『カトンプールでの最後の日』のYee Wei Chai監督[

恋人と過ごした時間や、子供時代の思い出、そして悲しい別れ。桃の缶詰に込められたさまざまな感情を描いた『桃の缶詰』。普段はCMディレクターをしているという川上信也監督は、現在シナリオ学校で勉強中。その課題から生まれたのが本作だそうです。司会のDJ JOHNも大好きだという詩情豊かなCG映像は、デジタルハリウッドとのコラボレーションということでした。

左から、川上信也監督と、出演者の辻千恵さん、品田誠さん。初めての演技経験だったという辻さんは、ナチュラルな魅力にあふれていました。品田さんは、「短い作品の中に、想像の余地があり何回も観れる作品となりました」とコメント。ちなみに今日が5回目の鑑賞だそうです。

 

アジア インターナショナル&ジャパン プログラム 10

映画雑誌Varietyで「観るべき映画監督10人」の一人に選ばれたRitesh Batra監督の「マスターシェフ」が特別上映された本プログラム。Q&Aセッションには、日本と台湾の計3作品からフィルムメーカーが登場してくれました。

最初にご紹介するのは、1000年後の世界で女性との関係に悩む青年が、祖先を呼び出して悩みを相談するというシュールな設定のアニメーション『THE ANCESTOR』。二人の男が、女性という生き物について好き勝手に語り合う会話劇は、挑戦的な表現ゆえに女性からの反発を招くこともあるそうですが、あくまで女性へのリスペクトであり、男性へのメッセージであり、「女性がいなければ男は何もできない」という思いが込められているといいます。声優には、『紅の豚』で主人公を演じた森山周一郎さんが参加!

『THE ANCESTOR』の長谷真行プロデューサーと小林光プロデューサー。モノクロの味わい深いアニメーションは、監督が鉛筆とボールペンだけで描いているそうです。

  

ちょっと“普通じゃない”コンビニ立てこもり事件を描いた『Last Lie』。岡元雄作監督は、約12分のショートフィルムの中でサスペンスからコメディ、そして最後はラブストーリーとなるめくるめく展開を計算して脚本を書いたといいます。予算は10万円で、制作費の7割がコンビニのスタジオ代金。監督自らカメラを回して、3人のスタッフで製作したそうです。

左から岡元雄作監督、出演者の林奏絵さん、優美早紀さん。緊迫感のあるシーンを見事に演じていた出演者のお二人は、監督が主催するワークショップでこの作品を演じたことがあり、当日は3時間くらいの稽古で本番に挑んだそうです。

 

母の日のお祝いを計画していた姉妹に、想像を絶する悲劇が訪れる『母の日おめでとう』。Li-Ling Hsieh監督による台湾芸術大学の卒業制作です。指導教官は、なんと『海を見つめる日』などで知られる台湾映画界の重鎮・ワントンさん!

『母の日おめでとう』のLi-Ling Hsieh監督(右)

耳の聞こえない妹と、その姉が全編通じて手話でやりとりする本作。その迫真の演技は、会場のお客様から「本当に耳の聞こえない方なのか?それとも演技なのか?」と質問があがるほど。実は、出演者に手話の経験はなく、監督と一緒に半年間もの歳月をかけてレッスンをしたそうです。言葉を使えない設定にすることで、安易な説明に陥ることなく、姉妹の複雑な感情が生々しく表現されていました。

 

インターナショナルプログラム 3

本年度のアカデミー賞にもノミネートされた『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメが出演した『サインスピナー』も上映された本プログラム。

上映後のQ&Aには、児童養護施設の子供たちを描いたセンセーショナルなフランスの作品『子供』から、Charlotte Karas監督とThierry Le Mer監督兼撮影監督が登場してくれました。

『子供』のCharlotte Karas監督(左)とThierry Le Mer監督兼撮影監督

新しい両親を見つけるためにウェブサイトで自分を売り込むというドキッとさせられる設定は、同じシュチュエーションのドキュメンタリー番組を観たことから生まれたそう。フィクションである本作は、より膨らみのある物語にするために、何人かの子どもを追っていくというスタイルを採用したといいます。

『子供』にはたくさんの子供たちが出演しますが、プロ意識の高い子が多く、撮影が滞ることはなかったそうです。

ドキュメンタリーと錯覚してしまうほどリアリティのある子供たちの演技が印象的な作品でしたが、実はこれ、すべて用意されていた脚本通り。一方で、カメラマンを2人入れて、子供たちのナチュラルな仕草を逃さずに作品に取り入れていったといいます。制作費は5,000ユーロ、子供たちの労働時間や集中力を考えて、ワンシーン最大3時間の撮影で、4日間かけて完成させたそうです。

いかがでしたか?

SSFF&ASIA2018は、プログラム終了後も、ロビーでフィルムメーカーたちと会話をしたり、記念撮影をしたりとアットホームな雰囲気で楽しんでいただけます。さらに、コンペティションプログラムでは、来場者の投票によって選ばれる観客賞「オーディエンスアワード」の投票箱も設置しています。ぜひ、あなたも会場に足を運んで、映画祭にご参加くださいネ!

 

written and photo by チバアキフミ